作業に至った状況
最近、音楽(制作)環境の再構築を行っていたりします。
そんな中、90年代中頃に買ったきりほとんど使わないまま放置されていた小型MIDIキーボード《novation mm10-X》を、システムの一部として組み込みたいと考えました。
なにしろ古い製品なので出力はMIDI OUTのみ、USB端子などは備わっていませんが、小型軽量で弾きやすいフルサイズ鍵盤(25鍵)、乾電池で動作しサスティンペダル端子も装備していて、操作パネルも省スペースでありながら
- MIDIチャンネル変更
- 8段階のオクターブシフト
- プログラムチェンジ
- 半音単位のキートランスポーズ
- コントローラホイールへのMIDIコントロールチェンジ割り当て
と、MIDIキーボードの基本機能がしっかり押さえられているとても素晴らしい製品です。
近年ではRolandのBoutiqueシリーズのような、MIDI INが搭載されている小型音源モジュールにまさにピッタリ。
おまけに本体側面にはショルダーキーボードとして使えるストラップピンまでついていて、至れり尽くせりです。(笑)
…とまあこんな良い製品であるにもかかわらず何故ほとんど使わずにいたのかというと、実は買った時点から重大な初期不良があったからです。
操作ボタンの効きが、異常なまでに悪かったのです。
それも、どれか一つなどではなく、上下左右、4つ全てが。
全体重を掛けて、壊れるんじゃないかと思うくらい力の限りギュウギュウ押し込んでやっと反応するとか、文字通りそんな感じでした。
特にオクターブの上下を頻繁に行わなければならない鍵盤数の少ないキーボードの場合、これは致命的です。
・・・要するに、欠陥品だったと。
とはいえ当時は仕事で打ち込みをしていたのでメインの鍵盤はちゃんと別に存在し、他にもいろいろ忙しかったこともあって、特に処分することもなく、買ってすぐに押し入れに放り込んでそのままになっていたのでした。
それ故、20年以上も前に買った代物にもかかわらず、ごらんの通りぴかぴかの新品同様。あまりに惜しく、なんとか使えるようにできないものかと思ったわけです。
ちょっとした情報を手に入れるにもいちいち苦労した当時と違い、今はネットがあります。
ということで、こうしたゴムで出来たボタンの修理方法を調べ、実践してみたのでした。
修理作業の実際
まずは裏側のネジをドライバーで全て外し、カバーを開けて中の基板のネジも外します。
予想していたとおり、単純で大味な作り。使う工具は普通のプラスドライバー1本で、分解も簡単です。
ボタンは板状のゴムパーツで4つ全てが繋がっており、裏面の各々の接点に丸く小さい、黒い電導ゴムが貼ってありました。
押し込むとこれが基板に触れて、配線の切れた部分を繋ぐ仕組みです。実に単純。
ネットで調べながらいろいろ考えた結果、今回はゴムボタンの裏側の電導ゴムの部分にアルミ箔を貼る方法を試すことにしました。
事務用のパンチでアルミホイルに穴を開け、出来た小さな円盤状のアルミ箔を電導ゴムの部分に接着剤で貼りつけます。うちの事務所で使っているパンチの穴が大きさ的にもちょうど良いのではないかと思いましたが、実際やってみたらちょっと大きかったです。まあ許容範囲ですが。
あとは元通りボタンパーツを元の位置に配置して基板をケースにネジ止めし、裏蓋を閉じます。
アルミ箔と接着剤の分だけ厚みが増したので、常にボタンが押されている状態にならないかちょっと心配でしたが、全く問題ありませんでした。
その後いろいろ操作してみると、あまりの変わりように驚き!軽く押しただけで即座に反応するようになり、連続押しもスムーズ。今までの苦労は一体なんだったんだ、と。
20年以上使えなかったアイテムが突然使えるようになった嬉しさはひとしおで、新しい機材を買った時にも似た感動と高揚感でした。
余談&おまけ
ちなみにこのキーボードの本体中央の不自然な凹みは、下の写真のようにして使うために設けられています。
中央に鎮座しているのは、90年代に一世を風靡した超小型の音源つきハードウェアシーケンサーYAMAHA QY10です。歴史に刻まれた名機のひとつですね。私も随分、お世話になったものです。
キーボードの機種名がmm10…となっているのは、このQY10用の意味が込められているのでしょう。
写真のQY10は残念ながら内蔵電池が切れてしまってまともに使うことができなくなっていますが、これもそう遠くないうちに復活させたいところです。ただこの当時のYAMAHA製品は基板から電池を外せないらしく、私が自分で出来るのかどうか疑わしいですが。
なおこの《novation mm10-X》、MIDIはOUT端子だけしかなく、しかも電池駆動という頼りなさですが、YAMAHAのMD-BT01(Bluetooth MIDIアダプター)が普通に使えます。
KORG GadgetなどのiOS音楽アプリを使っている私としては、こうしたコンパクトな鍵盤がワイヤレスで繋げられるのは非常に嬉しいところです。